東京新聞(2004年7月6日)

「憲法は、今」3 ―抑止力かエンジンか―
揺らぐ「平和の党」 正念場は審判後に



 「与党に入って四年八ヶ月。庶民の痛みが分かる政治へと変えて参りました。」参院選が公示された六月二十四日、支持母体の創価学会の婦人部から絶大支持を得る公明党比例代表候補、浜四津敏子(五九)は学会本部に近い東京・四谷の選挙事務所で第一声を発した。

 さい帯血移植の普及、アレルギー疾患対策予算の増加・・・。実現させた政策挙げ、与党として能力をアピールする。短い演説は自衛隊の多国籍軍参加や、選挙後の政治日程に上る教育基本法の改正には、何も触れられないまま終わった。

 公示の一週間前、京都市で開かれた同党衆院議員池坊保子(六二)の講演会集会。来賓に招かれた自民党の元幹事長野中広務(七八)は、イラク戦争をめぐる一連の小泉政権の対応を批判した後、こう公明党を持ち上げた。

 「その中で抑止力を働かせたのが公明党。連立政権を組んでいなければ、もっと危ない局面がたくさんあった。平和と人権と福祉を党是とする公明党がいたから、この程度ですんでいる」

 だが、公明党は野中が語ったような政権の抑止力になっているのか。そんな疑問が支持者の中から上がっている。

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 三代続く創価学会員、兵庫県三原町のウェッブデザイナー山口大輔さん(三四)は昨年三月、イラク開戦を公明党代表の神崎武憲(六〇)が容認したのを知って、がくぜんとした。

 「池田大作名誉会長が掲げる平和の理念と百八十度違う。なぜ戦争に反対しないのか」
 友人の学会員らとともに、イラクへの自衛隊派遣に反対する署名をネットで呼びかけ、今年一月に千八百四十七人分の署名を党本部に届けた。

 「今の公明党は、小泉政権のブレーキ役になるのではなく、むしろエンジン。イラク特措法など自民党単独では通せない法律を、次々に通してしまった」。山口さんらは同党の主な候補者に、自衛隊のイラク派遣や憲法改正についての見解をただす公開質問状を送ったが、回答はまだ、一人からしか返っていない。

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 公明党幹事長の冬芝鉄三(六八)は四日のテレビ番組で「世界中どこでも米国とともに戦うことになる意味での集団的自衛権にはあくまであくまで反対したいし、党の合意を得られない」と述べ、憲法改正による集団的自衛権行使を容認しようとする首相小泉純一郎(六二)の発言に否定的な見解を示した。

 参院選を前に、憲法改正をめぐる「論点整理」をまとめ、憲法九条堅持の姿勢を鮮明にした公明党。同じ時期、来年の結党五十年に向けた新綱領の原案で、初めて「新憲法の制定」を明記した自民党。鮮明なる両党の考え方の違いに、自民党若手議員たちは「参院選の結果次第で、公明党の発言力が強まるのではないか」と危ぐする。

 新綱領原案をまとめた自民党の与謝野(六五)は「公明党の発言力が強くなっても、基本的な問題で自民党は姿勢を変えてはいけない」と話す。「憲法改正は自民党と民主党が大連立を組まなきゃできないからね」。キャスティングボートを握ると自認する、公明党へのけん制の言葉だった。

 抑止力になるのか、エンジンになるのか、それとも二代政党の渦にのまれるのか。正念場は、選挙後に訪れる。

 公称八百万世帯余の信者を擁する創価学会。その本部からは、こんな声も伝わってくる。「公明党が集団的自衛権を容認すれば、私たちの信頼を裏切ることになる。その時は縁を切り、平和を愛する新党をつくればいい」(敬称略)

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